DON'CRY -ドンクライ-

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創作BLが姿を消したあの日、私は絶叫した 〜ネットに巣食う腐女子たち〜

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唐突だが、ぜひ読者に問いたいことが3つある。
1、なぜ創作BL小説に登場する攻めは「一目で上質なものだと分かる」服を着ているのか。
2、なぜ創作BL小説に登場する受けの「四肢はしとどに濡れてる」のか。
3、なぜ創作BL小説に登場する受けを見た攻めは「うっそりと笑う」のか。
同じ疑問を持ったことのある同志は、すみやかに生徒会の休憩室に集合してほしい。

はい、今日の本題はお察しの通り「創作BLと腐女子」についてです。
pixivという巨大なハブのおかげで、我々腐女子が日々その恩恵に預かり、充実した”ライ 腐”を送れていることは書くまでもありません。

しかし、尊敬すべき同志たちよ、ネット荒野をさまよったあの過酷な日々を忘れてはいまいか?

 

腐女子の居場所だったモバゲー

ここで10年前を振り返ってみましょう。

当時のSNSはあれですよ、mixi、グリーにモバゲー。
同志たち同様、mixiリア充(当時はこんな言葉ないか)のものだと思っていた私は、無難なモバゲーにひっそりと生息しておりました。
自分のペルソナを好みの髪色、服装などに着せ替えて、リア友ネカマ趣味人たちと交流していた、あのサービスです。

まわりの同級生たちがmixiの足跡で一喜一憂するなか、モバゲーのヘビーユーザーだった私は、本名をかすりもしない中二病全開のハンネをかかげ、毎朝昼おやつ夕晩深夜とあしげくページへアクセスしておりました。
が、その理由は誰かとつながるためではなく、小説とか漫画が投稿できるサービスを利用するためでした。

そもそもみなさん、モバゲーにこんなサービスがあったこと、知ってました?
おそらくケータイ小説ブームの直後で、『魔法iランド』とか『野いちご』の9873432番煎じとして作られたサービスだろうと思われますが、もともと人とつながることを目的としたモバゲー内にできたことは読者と作者、読者同士の交流を促したという点で、大きな特徴だったと思います。※現在は「 エブリスタ 」というサービス名で続いているようです。

投稿作品はNL(ナチュラルラブ)、サスペンス、ギャグ、BLなど様々でしたが、何より このサービスの一番の特徴は全作品がオリジナルってことでした。

ここまで読んでくれた方の全員が腐女子ということはありえないので、ここでBLというジャンルの構成図についてお話ししておきましょう。
BLはおおまかに商業作品、二次創作、オリジナルの3つに分けることができます。

商業作品は出版社が販売している本、制作会社か作製しているアニメ、ゲームといった作品のこと(『純情ロマンチカ』、『鬼畜眼鏡』など)。
2つめの二次創作は、商業作品をベースにした作品のこと。 もともとBLとして発表された商業作品だけでなく、(全)登場人物たちを同性愛者として ありとあらゆるCP(カップリング)に仕上げることも非常に多いです(カカシ×ナルト、 山崎宗介×松岡凛など)。
そして最後のオリジナルとは、個人が趣味で作り出した、完全オリジナルの作品のことです。

オリジナル作品の魅力、それは何の抵抗もなく読めること、これにつきます。
わかりやすく説明すると、商業作品同様ストーリーは完全オリジナルであるため、自分で好きなように登場人物の詳細(声からバックグラウンドまで)を想像できるんです。
一方、二次創作の場合、原作の世界観や設定などを念頭において読むことになります。 これがなかなか難しいのです。

たとえば原作の設定を無視して二次創作筆者の嗜好がだだ漏れすぎて気持ち悪いとか、土銀だと思っていたのに銀土だったとか、そもそもカカシとナルトをただの師弟としてしか見たくないとか。
いまでこそ好みの絵師さんに出会えたり、地雷回避のすべを身につけたおかげで、二次創 作を楽しめているわけですが、沼に足の小指をひたした程度だった中二病時代の私にとって、モバゲーの「オリジナルオンリー」という縛りはありがたかったわけです。

 

絶望を学んだ日とそれから

創作BLには小説と漫画(イラスト)がありましたが、私は小説を好んで読んでいました。
当時の王道といえば生徒会ものですよね。
会長以下全員が平凡な転校生を奪い合ったり、転校生は敵対勢力の総長だったり、いつも着けてるヅラとビン底メガネを外したらとんでもない美形だったり、、、
たいてい説明に「王道でごめん」とか書いてあるんだけど、それでも書きたいんだよね、 わかるぞ。

それからゲーム『鬼畜眼鏡』が流行った時は「黒縁眼鏡」とか「鬼畜」とか、明らかにパロっぽい作品が多かったように思います(毎日更新されるランキングをしらみ潰しに上位 から読んでいた私が言うんだから間違いありません)。

そんなある日、私は絶体絶命の危機にさらされることになります。
モバゲーが18禁15禁の作品を規制し、一気に人気作が非公開になったのです。

「うあああああああああああああああああああ(狂)」https://media.giphy.com/media/HJDYGAHW4xaO4/giphy.gif

これが世に言う 「創作BL難民時代」〜モバゲーの変〜 です。

舐めるように読んでいた作品が見れなくなった時の焦燥感と言ったら、、、!?
いいですか、 腐るって湿気がないとダメなんですよ。 腐敗の敵は乾燥です(何を言っているんだ私は)
ルールはルールだし、規制がないと無法地帯になるのは世の常、それはわかる。けどさ、きちんとルールにのっとってちゃんとした腐女子に徹していた我々はどうすればいいんだよ。

さらに追い打ちをかけるのは、作家たちの残した最後の叫びです。
多くの方は削除後に一言残してから消えるんですが、そのたった一言がまた悲しみを助長させるんですよ。

「通報されたので消しました」
「応援ありがとうございました」
「またどこかで会いましょう」
「探さないでください」 

一言に込められた様々な思いを推し量っては(腐女子の得意分野)悲しみにくれる 日々、、、
絶望に打ちのめされながら、うろ覚えの登場人物の名前、職業、作品のジャンル(学園モノetc)を検索窓に打ち込むも、そう簡単には見つからず。 通学時間、寝る前、休日、ありとあらゆる時間を埋めてくれた名作たちを求め、ネット荒野を彷徨う日々が続きました。

 

オアシス「ポケクリ」との出会い

そんな砂嵐吹き荒れる絶望の淵にあった私の眼の前に、一本の蜘蛛の糸が現れます。どうやら「 ポケクリ 」とかいうオアシスがあるらしいぞ。
多くの作家たちが「ポケクリ」に移住したらしいぞ。

モバゲーにあった数多の『BL短編集』の中でも一推しだった作家の作品を見つけた時の喜びといったら!!!!

高鳴る鼓動をなんとか鎮め、「BL短編集 ◯子」と打ち込む私。
トップで◯子さんの「BL短編集」がヒットする私。←???
震える手でリンクに指を伸ばす私。
震える手でリンクをクリックした私。
もう私!!!!!!!!!!!!

「◯子さん、私たちはまた出会う運命だったんです。あなたが女か男かネカマか変態か存 じませんが性別なんて関係ない。私たちがBLから教えられたこと、それは人間愛です(ですよね?)もう二人を邪魔してくる障害(年齢制限、通報、世間の冷たい目)なんて関係ない。今すぐ結婚しまs...」(読了後の私の心の声)

てな勢いでついまくしたててしまいましたが、とにかくあの時の喜びは今でも忘れられないです。
この出来事から学んだこと、それは腐女子にとってネット荒野は過酷な世界だし、だからこそ一期一会を大事にしなければいけないということです。

今はpixivもあるし、当時よりお金があるから商業誌も同人誌も自由に買える。 ネット荒野を生き抜くすべも身につけた。
けど、私のBL好きを確固たるものにしてくれたのは、地道にネット検索を重ねて出会った多くの作品たちであり、その作家たちです。

彼らが、ルールとルールの間を縫うように築き上げたネットワークのなかで、数多の出会いと別れを繰り返しながら、今日まで私は腐女子として生きてきました。

追いかけていた作家のなかには、商業誌デビューをした人もいます。
液晶をスクロールしながら読んでいた創作BLが単行本になる、出版社のツイッターで告知される、グッズがアニメイトに並ぶ。
作品作家ともども評価されることは読者として本当に嬉しいし、二次創作では起こらない出来事のオンパレードも、創作BLの魅力のひとつです。

商業誌デビューをしながら並行してpixivに作品を投稿したり、コミケに出店したりする作家が多いのは、ネット発が多いBLの特徴かもしれません。
pixivの閲覧履歴が有料会員しか利用できないことも「一期一会を大事にする腐女子だからオッケー!」というわけではありませんが、
この記事を書きながらあらためてネットの腐女子の親和性を実感し、まだ見ぬ運命の一作との迎合を楽しみに生きていこうと思ったのでした。

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