DON'CRY -ドンクライ-

アニメやマンガ、ゲームに小説、音楽など、「作品」によって孤独から救われて生きている人のためのメディア

腐女子の私が「なりきりチャット」を通じて女同士で恋をして、孤独から救われた話。

はじめまして。
社会人数年目の腐女子です。
どのレベルの腐女子かと言うと、大学時代は月1で同人イベントにサークル参加。
年15冊、400ページは原稿を描いており、学校やバイト、原稿の〆切に追われ、忙しくも楽しい毎日でした。

大学時代、そして現在に至るまで、私はとても満たされています。
しかし昔は、そうではなかった。毎日がつらかった。

みなさんは生きていく上で"孤独"を感じたことがありますか?
その孤独を、何で埋めてきましたか。

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世の中は人で溢れている。
街を歩けば人とすれ違う。学校や職場に行けば話す人がいる。家に帰れば血の繋がった家族がいる。

それでも、目の前にいる人が必ずしも自分を見てくれるとは限らない。
人それぞれ、孤独の感じ方は違うと思います。

私の場合、"愛"に飢えていました。
自分を愛してくれる人が居ない環境に、孤独を感じていたのです。

母ひとり子ひとりの家庭で、母は恋に生きる人間でした。
ご飯は出てこない、夜家にいない、彼氏は取っ換え引っ換え。
小学生の時に1ヶ月5000円のお小遣い、テストで100点取ったら1000円。
お金はある、けど求めていたものはそれじゃない。そばに居てほしい、話を聞いてほしい、触れてほしい、……愛が欲しい。でも愛ってなんだ?

そんな自問自答を繰り返しながら、渡されたお金で行き着いたものは、マンガでした。

マンガの中には、自分が知らない世界が広がっていた。
始めの内は読んでいるだけで楽しかった。読んでいるだけで寂しくなかった。

そのうちBLにハマり、二次創作にハマり、自分でも小説やマンガを書き始めました。一種の自己承認欲求なのでしょうか、送られてくる感想が嬉しかった。

けれど、ある時ふと気がついてしまった。
マンガの中の世界は、所詮"私の世界"ではない。他者と他者の物語。

送られてくる感想も、私の"創作物"への言葉で、私自身へ向けた言葉ではない。
そこには、愛情は存在しない。

私はマンガの中の世界に、存在しない。そのことに気づいた時、突然また虚しくなって、"孤独"を感じてしまった。
でも寂しさの一時しのぎのために、マンガや創作の世界からは離れられない。

そんな時、ずっと抜け出せなかった"孤独"から、救ってもらった出来事がありました。

もっと詳しく言えば、マンガを通じて、インターネットで出会った"彼女"に救ってもらい、そして、私は彼女を救えず、彼女から逃げた、クソ女です。

今から書くのは、彼女との出会いと、別れと、クソ女だった自分への後悔。

そして、愛の種類についての、お話です。


なりきりチャット」という黒歴史

みなさんは"なりきり"と呼ばれる世界をご存知ですか?

「なんだそれ?」と首をかしげる方もいれば、「ああ~やめて!聞きたくない!見たくない!」と目を閉じ耳を塞ぐ方もいるでしょう。
どっぷり浸かっていた人には、完全黒歴史な世界。それが"なりきり"です。

なりきり「インターネット上で、掲示板やチャット、メールなどを利用して、自分とは別のキャラクターに”なりきり"会話する行為」です。

マンガ・アニメ・ゲームのキャラクターや実在する有名人、もしくはオリジナルキャラクターなどジャンルは様々。

私の場合、二次創作のBLなりメ(=なりきりながらメールでやり取り)をしていました。

なりきりする中の人は「PL(プレイヤー)」、もしくは「本体」「背後」などと呼ばれ、扱うキャラクターを「PC(プレイキャラクター)」と呼びます。

なりきりの基本ルールは…

・()内でキャラクターの行動を表し、()外で台詞を述べる
・完なり=本体同士の生活を挟まず、その世界観で起こりうる物語を演じていく
・半なり=キャラクターの口調・性格だけを借り、本体の日常に起こったことを会話する(朝起きた時「おはよー」と挨拶をする。本体が社会人であれば出勤の部分を、PCが学生だった場合「学校行ってきまーす」と表す、など)

たとえば…
 

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…とまあ、こんな感じです!

()内で心情や状況・動作の説明をします。慣れるまでが難しく、表現の好みもあるため、相性ぴったりのお相手を見つけるのが難しい世界でもあります。

私はこの世界でなりメを通じて「本体恋愛」に発展し、その相手に救われたのです。

「本体恋愛」とは、擬似恋愛を楽しむだけでなく、キャラクターを扱う本体同士が、現実で恋愛することを指します。 

中学生と、大人の、女同士の恋のはじまり。

 

彼女との出会いは、私が中学2年生の頃。

そもそも私がなりメにハマったきっかけは、最初は「小説のネタ集め」でした。

文章を書くのも、キャラクターの世界を想像して物語を作るのも楽しかった。けれどひとりでは限界があり、なりメをすると相手がいることで展開に幅が広がる。

そんな想いから始め、とあるマンガのジャンルで知り合った彼女。
キャラクター同士がライバルで親の仇という設定だったため、完なり時のPC同士は殺伐としたやり取りでした。

しかし半なりでは、次の展開を相談したり、忙しい時に一言「返信頻度が遅くなる」などといった連絡をしてくれる気配りに、本体の人の良さを感じていました。

なりきりの世界で、二次創作BLをしている人のほとんどが女性です。
意気投合して実際に会う、友人になるなどといった関係に発展するのは、全体の一割にも満たないと思います。
大半がインターネット上のみでの付き合いで、サブアドレスしか知らず、本名も知らない相手とやり取りをしている。

しかし人間同士の付き合いのため、些細な事でトラブルに発展し、別れに繋がることもあれば、女性同士でありながら「本気の恋愛」にまで発展するケースもあります。

私は基本、完なりしか興味もなく、
本体同士の会話も、必要最低限の連絡だけあればいい派でした。

彼女もそうだったと思います、しかし互いに人間性や相性が合い、だんだん半なりで日常会話をするようになっていきました。

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昔、私はリアルの生活がとてもしんどかった。
冒頭でも触れましたが、母ひとり子ひとりで、母は恋愛に生きる人だったため、ほとんど家に帰ってこなかった。
ご飯も作ってくれない。彼氏も取っ換え引っ換え。

自分の機嫌がいい時は私を猫可愛がり、気に入らないことがあれば怒鳴って暴力を振るい、お金さえ渡しておけばいいといった人間でした。

私はあんたのペットじゃない。どうしてこんなに振り回されなければならないの。

そう思いつつ、愛してほしい、帰ってきてほしい、話したい、触れたい。

大嫌い、だけど大好き、複雑な心境の中、悩み、不眠症不登校・自殺未遂。

でも生きていられるのは、マンガが好きだから。そんな毎日でした。

つらい時期がピークに来た時、なりメを続けられる気分でもなかったので打ち切りを申し出ました。
そこから、理由を問われ人生相談に発展、彼女は親身に話を聞いてくれました。

インターネット上での付き合いだから、なんでも話せた部分もあり、
彼女は10歳以上年上の女性で、昔、同じように親に暴力を受けていたこと
結婚する予定の彼氏からもDVを受け、別れた過去があることを打ち明けてくれて、境遇が似ていたことから、ぐんと心の距離が縮まりました。

教養と文章力が素敵で、展開の回し方も魅力的で、人として、とてもいい人。彼女は瞬く間に、私にとって信頼できる大人になり、良き相談相手、時にはとても楽しませてくれる遊び相手として、大切な存在になりました。

彼女に私は愛されていたと思います。私も彼女を愛していました。

しかし、少しずつ、少しずつ。
愛の種類が違うな、と感じ始めました。

彼女はいつしか私のことを「好きだ」といい、「大切な存在」「つらいなら一緒に住もう」「理解されないかもしれないけれど、あなたが求めているものではないかもしれないけれど、私があなたに抱く感情は恋愛に近い」そう告げられました。

やり取りの期間は、約3年。
なりきり界ではとても長い年月です。

中学2年生から高校1年生、当然恋も何も分からず、愛も知らなかった私は、初めは自分も同じように相手が好きなのだと思い、「嬉しい、ありがとう」と受け入れました。

けれどだんだん、返す言葉に困り始め、年下相手にこの人は本気なのだろうかと疑い始めました。
そのうち、リアルの生活で好意を感じる男性ができたことをきっかけに「ああ、私と彼女の想いは違う」と感じました。

また、演じているはずのキャラクターの口調を借りて、彼女の内面が強く表に出てくる度、殺伐としたキャラクターとは似ても似つかぬ優しさのギャップに、戸惑い始めてきました。

一言で言うと、「重く」感じ、「冷めてしまった」のだと思います。 

救ってもらったのに、逃げてしまった。

あんなにも相談に乗ってもらい、心を軽くしてもらい、前を向く勇気をもらった相手に対し、私の心は酷く、本当に幼かった。

別れ話を何度も切り出し、その度に愛を説かれ、気持ちのすれ違いを感じながらもやり取りを続けていくうちに、つらさが「なりきり自体」へと変わっていくのを感じました。

彼女の存在自体が、悩みのタネになり始めてしまった。

なんて自分勝手なんでしょう、けれど私は納得しない彼女を押し切り、「もう連絡しない、今までありがとう、さようなら」と言って連絡を断ちました。

彼女を嫌いになりたくなかった。
この気持ちは本当だけど、とんだ綺麗事にしか聞こえないと思います。
私は救ってもらった相手から逃げたのです。

どれだけ彼女を傷つけたのか、考える度、後悔ばかりが募ります。
けれど一緒にいるという選択ができるほどの覚悟もない、自己犠牲精神もない。

私の考えている幸せと、彼女が感じる幸せが違っていたのだと思います。

けれど今、こうやって文章を書くきっかけを与えていただいたとき、思いついたのはこの話でした。

この場を借りて、吐き出したい想いが私にはあります。

今でもふとした時、あなたのことを考える。
連絡を絶ってから数年間、記念日や私の誕生日に連絡をくれていたこと、気づいてました。

何度か探してくれたことも、知っています。
あなたが傷ついていたこと、諦めたくても諦めきれない想い、私に向けた言葉、全部全部伝わっていました。
悪いのは私なのに、最後まで私を責めないでいてくれたよね。


愛って、なんだろう。
あなたと出会って、私なりの答えが出ました。

"気にかけてくれること"

心配でも、気遣いでも、なんでもいい。私が悲しい時、元気が無いことに気づいてくれる。私が嬉しい時には、自分のことのように喜んでくれる。

あなたは私に、愛を教えてくれました。

つらい時期、救ってくれてありがとう。
あなたの想いから逃げてごめんなさい。

あなたがいなければ、今の私はいなかった。そう断言できるぐらい、あなたの存在は私にとって、とてもとても特別でした。

別にやり取りを再開したいわけじゃない、きっとそれは互いの為にならない気がします。
けれどもし私の想いが届くなら、ありがとう、ごめんね。
そんな気持ちを抱きながら、一日一日を生きています。

孤独から救い出してくれた彼女との出会い、出会うきっかけになった作品を、私は今でも愛している。

DON'CRY.
泣かなくなったわけではない。
でも泣いて過ごす夜が減り、笑顔が増えた自分がいる。

今回は、そんな人間の人生の、ひとつのお話をお届けしました。


書いた人:20代腐女子(匿名)