DON'CRY -ドンクライ-

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西暦2029年、バーチャルYoutuberで僕らは統合思念体になる

昨年の12月から急激に僕のタイムラインに「バーチャルYoutuber」という単語が溢れかえりました。

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(出典:Kaguya Luna Official)

3Dモデリングされたキャラクターに声がつき、人間らしい動きをしながら、Youtuberらしい「やってみた」企画や、ゲーム実況などを行う…僕も様々な動画を見て純粋に楽しんでいます。

彼女たちは大きい目や、シルバーの髪の色、服装や設定などはまさに「萌え」を兼ね備えた2次元的なキャラクター。

にもかかわらず、彼女たちから僕は、人が3次元で持つ「見た目」という身体的コンプレックスをゼロにする可能性が見えたのです。

 

キズナアイという「人」

今一番人気があるバーチャルYoutuberは「キズナアイ」でしょう。

(出典:A.I.Channel)

Youtubeのチャンネル登録者数100万オーバーである彼女は、元々北米や東南アジアでの人気が高く、登録者数の6割が海外ユーザーだそう。

日本で一気に知名度をあげたのは本当に最近の話ですが、単に「可愛い」でないのが彼女の魅力。一つ一つの動画のクオリティが高く、単なるYoutuberの焼き増しではないのです。

例えば、彼女が「身体測定」をする動画は、やっていること自体は単純ですが、モーションキャプチャーの精度が半端ない上に、キャラクターのパーソナルまで分かりやすく伝わり、初めて見た時のインパクトには凄まじいものがあります。

(出典:A.I.Channel)

それは刺激的で、まだ見たことのないモノを求めるインターネットの住民たちと相性がとにかく良い。

それも、僕たちは与えられた「」を見ているのではなく、キズナアイという「個人」を見ている。彼女のYoutube動画を見て、Twitterのコメントにいいねをする。たとえ彼女が現実に存在しないとしても、対人コミュニケーションがそこでは成立しています。

また「個人」をもったキャラクターは少ないはずです。ふなっしーやアニメのキャラクターは、大半が何かの目的で生まれた戦略的なキャラクターでしょう。目的のために行動し、ユーザーに情報を発信し続け、契約や戦略の目途が立てば消えるキャラクターです。

(出典:キズナアイ公式Twitter)

しかしキズナアイは「個人」を持つ。多くの人がTwitterをやっていると同じ理由でそれを活用し、Youtubeに動画を投稿し続けています。彼女自身には「目的」といえるものがない。

キャラクターという本来「目的」のある存在が、それを持ちえないからこそ「人」としてのコミュニケーション、魅力があると思えます。

 

理想の自分になれる現実がある

「人」として捉えることのできる彼女たちバーチャルYoutuberですが、その最もたるメリットは身体的コンプレックスを無くすことです。

僕も自分の顔や背丈、体型に自信はありません。自信がないから人は整形という手段で自らを理想の形に近づくのでしょうが、それには莫大な費用とリスクを伴います。

でもバーチャルYoutuberは「見た目」を自分で作り出し、調整することができる。さながらゲームのキャラメイクです。

ただゲームと異なる点は、ゲームのだけではなくあらゆる形でその自分を表現し、見てもらうことができる点でしょう。

バーチャル空間に自分の身体情報を書き換え、それを「個人」としてコミュニケーションが得られる。これは大きな革命です。

そのもっともな例として「のじゃおじさん」で親しまれているバーチャルYoutuberがいます。

(出典:けもみみおーこく国営放送)

彼というべきか彼女というべきか判断に迷ってしまいます。なぜなら見た目がロリ狐娘にもかかわらず、声がオッサンというなんともちぐはぐな存在だからです。

しかし意外にもこれに不快感はありません。

目を閉じて動画を見ていると「オッサンが何言ってんだ...」となってしまいますが、不思議とロリ狐娘を通して見ることで存在が成り立ってしまいます。

ゲテモノなどという扱いではなく、その「見た目」含めた存在として認めざるをえません。

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(出典:けもみみおーこく国営放送)

人の見た目は9割」という言葉を見ると、「見た目より中身が大事だろ!!」と無意識的に反発してきましたが、のじゃおじさんを見ていると、悔しいですが「見た目」はとても大事なのだと思わざるを得ません。

その動画を見て現れるものは、「見た目」が伴って初めて中身が見てもらえるのか、という絶望であり、 同時に見た目も性別も国境も民族も関係をなくす可能性です。

肌の色、髪の色や長さ、あらゆる「見た目」の情報がカスタマイズできてしまう。このバーチャルYoutuberは大きな可能性を示してくれている気もします。

 

声優飽和時代への活路

この身体的コンプレックスを無くす、または身体情報書き換えることで、本当に理想的な自分を手に入れることが現実的に可能になったと思えます。

それは老いることもなく朽ちることもなく、スキャンダルとは無縁の彼女たちを見ていて、芸能業界への親和性は高いのではないでしょうか。

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(出典:Mirai Akari Project)

昨今の声優=アイドルとしての活躍や、いわゆる声のお仕事以外の分野も広がってきた職種にとって「見た目」は生命線です。

逆にどれだけ声がよかろうとも、「見た目」の部分で大きな舞台にたどり着けていない人たちも少なからずいるのかもしれません。

バーチャルYoutuberはそういった人たちの希望ではないでしょうか。

同時に現在の業種形態を躍進させる可能性が、ここには大いに存在すると思えます。本当に近い未来であれば、バーチャルYoutuberが、アニメキャラクターの声を担当する逆転現象が起こるかもしれません。

しかも彼女らの中の人は東京にいようとも、ディスプレイひとつで世界各地に営業やイベント出演することも可能です。

いま僕や、彼女らには思いつかない可能性がとにかく眠っている。彼女たちは単なるキワモノではない。可能性の獣です

 

西暦2029年、バーチャルYoutuberで僕らは統合思念体になる

--時は西暦2029年。

世間は電脳アイドルブームとなり、いつでもどこでも誰もが、好きな時にアイドルになれる時代となった。

そして世界各地のアイドル14,5672組、計23,7672,9019人が一堂に会する「バーチャワールドアイドルサミット」、通称「VIS」が開催されることが決定した。

しかもキズナアイをはじめ、輝夜月、ミライアカリなどV1世代(バーチャルYoutuberをはじめとする、初期バーチャルプロダクトを生み出した世代)と呼ばれた彼女らの出演も決まり、イベントは大きな注目を集めている。

V1世代はオリジンとしての人格形成性が高く、誰もが彼女らになれるわけではない。しかし輝夜月モデルから派生し、彼女自身が事務所の代表を務める「HIME PRODUCTION」からリリースされている、「MOON MOON LIGHTS」の白光キラは約10,000人おり、僕もその1人だ。

その万人の中でも自慢ではないが、自分は4番目に人気のある白光キラだ。

しかし40手前の自分がこんな風に注目を浴びるとは思わなかった。たまたまのトーク力と人当たりの良さがウケたのだろうか、寒いおやじギャグもカワイイ女の子を通して伝えれば、面白いコンテンツとして昇華されていく。

しかしNo.1の白光キラを追い越せるイメージは自分にはない。 そろそろこの見た目にも見切りをつけて、新しいスキンに乗り換えてもいいかもしれない。

オーダーメイドに手は届かないにせよ、複数のスキンをカスタマイズしてそろそろオリジナルのスキンを自分で持つのもいいだろう。

キズナアイモデルが長く人気を得ているが、自分のスキンを気に入ってもらい、世界中にの人が「自分」になる日がくるかもしれない。

もう僕は僕じゃない。統合思念体としての僕だ。キズナアイを超えて、何万何十万という「僕」が同時に存在する日がやってくるのだ。

そんなことを考えているとイベントのカウントダウンが始まった。仲のいい白光キラモデルの友人と会場へとアクセスを試みる。少し新しいスキンについて彼に相談してみよう。きっと彼は分かってくれるだろうから。

 

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