DON'CRY -ドンクライ-

アニメやマンガ、ゲームに小説、音楽など、「作品」によって孤独から救われて生きている人のためのメディア

ハマってる姿に救われる人がいる。恥ずかしい「好き」なんてない!

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アラフォーの独身がアイドルにハマるって超イタくない?

こんにちは、ノダショーです。こんな言葉、どこかで聞いたこともありませんか?

かくいう僕も中高時代、母親から「アンタがどれだけそのゲームをやろうが、現実のアンタのステータスは一つも上がらないのよ!?」と怒鳴られたことを思い出します。

つまるところ、これを言ってくる人というのは、見返りのないものに想いや時間を使うのはムダということを言っているんでしょうね。

でもそれ、ホントでしょうか?

いや、むしろその逆に、誰かの「好き」や「ハマってるもの」のことを聞くだけで救われることってないでしょうか? ムダの逆、むしろ他人にいい影響を与えるということです。

 

好きなものを語る時、人は冷静ではいられない

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(出典:amazon / ©ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社)

テレビの中、厳しい顔をした宮崎駿が「僕はオタクが嫌いなんで」と言い放つ。

一見すると中々厳しい一言ですね。

でも、その直後のシーンでは、宮崎駿は庵野秀明と一緒になって飛行機のフィギュアを持って眼を輝かせて語っているんです(笑)オイオイ、お前が言うなよと(笑)

これは『夢と狂気の王国』というジブリのドキュメンタリーの笑いを誘う1シーンですが、天下の宮崎駿でさえ、好きなのモノの前ではこの有様なんです。

なら、僕ら一般人がそれを隠せる訳がありません(笑) 

 

流れ出す愛に浄化される瞬間がある

酒場や、駅でのちょっとした待ち時間で、「あ、それ好きなんだ?」と言ってしまったが最後。ダムが崩壊したように放出される愛の凄まじさといったら!

例えばある人は、すごい笑顔だったりニヤケだったりをこぼしたりしながら、「いや、ホントにヤバいんだって」と言う。

またある人は、碇ゲンドウのように手を組んで、溜め息をついてから、「話すと長くなるんだけど…いい?」と前置きをする。

好きを語る時、人は誰しも冷静ではいられない。そんな、ちょっと大げさな姿がメチャクチャ好きなんです。分かりますかね?

例えば、ルギアで一躍知られるようになった いなだみずきはロボットアニメが本当に死ぬほど好きで、ダムの決壊なんかじゃ収まらない。

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(出典:amazon / ©バンダイビジュアル)

例えば、『トップをねらえ』の話を振ると、まず一言。

マジで、マジでやばいんよ!ほんまに!

この時、いなだの目は血走り、口元は異様にニヤつき、鼻の穴がふくらむ。

そして、こちらを何度も指さしながら叫ぶ。

まず、キャラがやばいんねん! お姉さまっていうのがおってな…」そう順番に語り出す。

まず総括をしてくれ」とこっちは表情で伝える訳ですが、そんなものは彼には見えていない。というか、そもそもこっちを見ていない(笑)  虚空を眺め、完全に記憶の中にトリップしている。

だのに「お前いつもカミカミの癖になんなんだ」と言いたくなるくらい、その口は滑るようになめらかに動き、挙句、「あかん、鳥肌たってきたわ。ちょっと待って」と言いながら勝手に身震いし出す。

でも、こういう尋常ならざる姿というのは、なんだか見ているだけで微笑ましくなりませんか?

また、そういうものを語る時、多くの人はこれ以上ない素直な笑顔を見せてくれたりするんです。これがまたレアで嬉しい。

人によっては語れることが嬉しくて、スキップしたりとかするんですよ。そのピュアな感情に、ちょっとクスッとしつつも、元気を貰えることがあるんですよね。

  

好きで、「生きてこれてよかった」と救われる。それにまた誰かが救われる美しさ

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(出典:amazon / ©講談社)

そんな中、先日、「このマンガがすごい!」2018で4位を受賞した『たそがれたかこ』というマンガを読み終わりました。

そして、これが本当にこれまで話した「好き」の素晴らしさを体現してくれている作品だったんです。

あらすじとして、まず表紙の主人公たかこは45歳のバツイチ女性。主人公が45歳というマンガはなかなか珍しいです。

彼女は職場と家を往復するだけの平凡な日々に寂しさを感じています。

過去には不登校&拒食症にもなり、大人になってさえ、あとは老いていくだけという自分の人生を悲観している。

さらには娘まで不登校&拒食症になってしまうヘビーな状況。

しかし、そんなある日、彼女はある若いロック青年 光一を好きになります。ファンとして好きというより、異性として恋に落ちてしまうんです。

それから、そのアーティストの曲に魅せられて徐々に明るくなり、ついにはライブに足を踏み出します。

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(入江喜和『たそがれたかこ』より©講談社)

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(入江喜和『たそがれたかこ』より©講談社)

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(入江喜和『たそがれたかこ』より©講談社)

彼女のそれまでの現実は確かに、平たくいえば「クソ」だったのかもしれません。なんのために生きているのかもわからないような。

しかし、そんな彼女も、ロック青年 光一が人と上手くやれないところを音楽にぶつけたものに、とめどなく共感する。そして、それに同じように共感する人たちの中で救われていく。

何より、少しずつ明るくなって、光一の良さを興奮しながら語ったり、影響されてギターを買ってしまうようなピュアな彼女を見て、娘もどこか救われていく。

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(入江喜和『たそがれたかこ』より©講談社)

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(入江喜和『たそがれたかこ』より©講談社)

 

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(入江喜和『たそがれたかこ』より©講談社)

誰かが作った何かが誰かを救い、その救われた誰かがその素晴らしさを語るピュアで素直な姿に、誰かが元気づけられたり救われたりする。

それって、本当に素敵なことだと思うんですよね。

願わくば、今夜も誰かがベッドの上で救われる作品に、またそれを語る酒場での熱っぽい一言や笑顔に、誰かが元気付けられ、救われていますように。

 

書いた人:ノダショー
@doncry_mag編集長。@roomiejp編集・ディレクター。みんなで健やかに生きたい。「自分の存在価値に悩んだり、冬にお茶飲んでホッとしてるような作品が大好き